…あ。

彼は驚いた。

泣く亜利哀を見たのは、初めてでは無かった。

あの日、彼女が居酒屋にいた日、泣いていた。

それを誤魔化すように、飲み慣れない酎ハイなんて頼んでいたんだ。


つまりは、これだ。

彼女は誤魔化そうとしている。

泣いていた自分なんて居なかったかのように。

笑いが止んだ亜利哀の頬を抓る。

「何よ?痛いんだけど。」

「プロポーズだけど。」

一瞬大きく見開かれた瞳。

「駄目。男が夜中に吐く言葉なんて信じられない。」

「なんだそれ。」

「例え本当だとしてもね?そういうのはベッドの上のピロートークだけにしてほしいわ。」