「うん。やっぱりティアラは、なくて正解ですね。ご主人様、さすがです。お目が高い」
全て着付けが終わったとき、スタイリストが誉めてくれた。
といっても、コアラは最初から選択肢になかったので、卓也が選んでくれたのかどうか、百合の中では曖昧なままになってしまった。
「それでは、時間まで少しお休みください」
一人になった百合。
大きな鏡に映る、自分の姿をじっと見る。
自分で言うのも変だけど、とてもきれいだった。
シンプルなラウンドネックのドレス。
髪型も、メイクもアクセサリーも、さりげなく可愛らしい感じのものを選んだ。
タクは、きらびやかなものはあまり好みじゃないと思ったから。
タクにかわいいって思ってもらいたくて、一生懸命選んだの。
ね、わたし、かわいい?
卓也に、この姿を一番に見てもらいたかった。
そして、そう聞きたかった。
だけど・・・
タクはこう言うに決まってる。
「うん、かわいいよ」
そう言ってほしいのだけれど、本当に聞きたいのは、卓也の本当の気持ちだった。
タクが本当にそう思ってくれなければ、わたしはただの、道化だ。
まばゆいばかりに白く美しい外見とは対照的に、百合の心に不安の雲が広がっていく。
「ねぇ、タク。いる?」



