土曜日の憂鬱な花嫁


「ハダシでもいい?ほら、こんな風にあまり膝曲げないように歩けば、バレないかも…」

「大丈夫。そこの袋に入ってるよ」

予備の靴下を持ってきておいて、正解。
タクは絶対に忘れると思ったから、ね。

「お二人、息がぴったりですねぇ」
スタイリストが変なところに感心している。
わたしたち、別に漫才をしてるわけじゃないんだけど。

「あ、ところで。ティアラ、どうしましょうね?」
鏡台のトレーに、ティアラが残されていた。
髪の毛は、飾りをつけずにシンプルに。と思っていたのだが、ティアラの華やかさにもひかれて最後まで選択肢に残していたのだ。

うーん。どうしよう。
つけたらシンデレラ。
つけなければ白雪姫。
どっちも捨てがたい。

「タク」
こんな時こそ、タクに決めてもらいたかった。

「ね、ティアラをつけるか、つけないか。どっちがいいと思う?」

「え・・・」

卓也の目が、思い切り泳いでいる。
「どちらでもいいですよ」と顔にはっきりと書いてあるけれど、絶対に卓也に決めてもらいたいので、敢えて無視。

「ど、どっちも、いいと思うけど」

「タクは、どっちのほうがかわいいと思う?」

「・・・どっちも、かわいいよ」

「タクが決めてよ」

そもそも、女の人の「かわいい」と「かわいくない」の基準って、よく分からないんだよなぁ。

テーブルにつけるリボンをピンクにするかブルーにするかで散々悩んだあげく、グリーンにした百合の姿を見ている卓也にとって、この選択は荷が重すぎた。
自分の頭で考えても正しい結論が出せない自信があるので、卓也は百合とスタイリストの顔色を伺って決めることにした。



「・・・じゃぁ、コアラ抜きで」