「あ、あんたは?」

動揺を隠しながら聞いた。

「…………橘 奏」
「いい名前ね」

あたしは、素直にそう思った。

「…………そうでもない」

あいつは、ボソッと言った。

「え?」

あたしは、おもわず聞き返してしまった。

「…そろそろ、切るぞ。携帯の電池が減るだろうし」
「そ、そうね」

今、話しそらされた?

「じゃ、また明日」

あたしは疑問に思ったが、あえて聞かなかった。

「あぁ。じゃあな」

あたしは、電話をきった。

なんだろ……モヤモヤする。

あたしは、考えた。

なんで、名前聞いた時『…………そうでもない』って、言ったんだろ。

自分の名前が嫌とか?

って、悩んでも分かるわけないか。

あたしは、考えるのをやめた。

それにしても----

改めて、あいつに対する印象が変わった。初めて会った時は、あたしの歌を聞いて

『お前の歌を聴いていると不愉快になる』

って、侮辱してきて嫌な奴だと思った。でも、今日初めて話した時はなんか優しかった。

あたしの携帯を拾ってくれたり、なんだかんだいって、あたし達を助けてくれた。

初めて会った時の印象とは、違う。初めて会った時、たまたま不機嫌だったとか?

「変な奴」

あたしは、ボソッとつぶやいた。

佳奈に電話しないと。

あたしは、急いで佳奈に電話を掛けた。