「孝輔、気分はどうだい。」
大輔は家に戻るとそのまま孝輔の部屋へ行った。
そして広志と話した事を孝輔に聞かせた。
「じゃあ、あのアキさんの背後には暴力団のような人が居るって。」
孝輔はその言葉だけでブルッと身震いをした。
健康優良児のようなスポーツマンの大輔でも、こんな状態に陥れば自分を失ってしまうだろう。
それが、今まで争い事とは無縁、親の庇護のもとに生きて来た孝輔では、事実を知った孝輔がどんなに慄いている事か。
たとえ自業自得とは言え、元々は単に真理子の弟だったと言うことから始まったのだ。
それを考えれば、大輔はこの孝輔があまりにも不憫に思われる。
ヘロインが絡むとは… まるで次元の異なる世界の事ではなかったのか。
「多分… だってヘロインだよ。そんなもの普通では手に入らないよ。だから広志さんがあきらさんに一緒に行ってもらうって。だけど絶対に父さんには内緒、と頼んでおいた。」
「僕って最低だね。僕の方が死にたい… 」
孝輔は今までもここで考えていたのだろう。
その口から死にたい、と言う言葉を漏らした。
顔色が悪いから、その言葉に現実味を感じてしまう大輔は焦った。
広志さんはこういう孝輔も想定していたのだろう。
広志さんもこういう気持になった時もあったのだ。
その時に和ちゃんと悟さんが支えたのだ。
俺も… 絶対に孝輔を元に戻させる。
こんなのは本当の孝輔ではない。
俺の孝輔は、音楽の好きな,輝きのあるバイオリニストの卵だ。
さっきだって、ばあちゃんのリクエストに上手にバイオリンを弾いていたではないか。
大輔は何とかして孝輔を元気付けようとしている。

