「そうじゃあないけど… あのおばさんは根性が座っているし、鳶の化身のような人。
お人形さんのようにきれいな顔をしてスマートだけど、怒るとすごい。
口が達者で… それにほら、いざとなれば高杉さんだって加勢する。
何と言ってもおばさんの崇拝者だからね。
とにかくまずは僕とあきら兄ちゃんで、
二度と孝輔に手を出さないように掛け合ってみる。
あきら兄ちゃんも喧嘩早いから気をつけないといけないけど、
一緒に居てくれたら心強い。」
大輔は、ヘロインが絡めば大きな組織がバックに居る、と言うことなど考えても見なかったが… 有り得る事だ。
そんな危ない奴らが居るとすれば、このまま孝輔を黙って解放するつもりは無いかも知れない。
孝輔をヘロイン中毒にして、いつまでも買わせるつもりなのだ。
確かそんな事も言っていた… 何と言う卑怯な奴らだ。
そうか、だから広志さんはあきらさんに…
父さんには心配させたく無いから、あきらさんにも黙っていてもらおう。
それだけは約束してもらわなければ。
二人で話をつけられたら良いが。
自分は何も出来ないのだから、神に祈っている他は無い。
「大輔、今思ったのだけど、明日から日中は孝輔を僕のところに遣して。
大輔は普段通り学校へ行かなくてはならないから、僕の手伝いと言うことでしよう。
当分は外へ出ないほうが良いからね。」
「良いのですか。」
「もちろん。皆が仕事に出払ってから来たら良いよ。僕はヘロインのことより、今からの孝輔の精神状態の方が心配だよ。
孝輔はおとなしいから、なかなか自分の気持ちを外に出さない。
僕もそうだったからよく分る。だけど僕には和ちゃんや悟兄ちゃんが居て、
僕の心に貯めていた、いろんな悲しい気持ちを全部吐き出させてくれた。
あの和ちゃんのおしゃべりが始まれば隠し事など出来なかったから… 」
そう話しながら広志は懐かしそうに微笑を浮かべた。
まだそんなに昔の事では無いのに… 子供の頃の事を思い出している顔だ。

