ツインの絆


最近、広志の父・館山精一は十時ごろまで,事務所の上にある,
見習い達が暮らす大部屋に入り浸り、夕食も一緒に食べ、風呂まで済ましている。


同じ歳の川島正一という職人がそこに住み着き、見習い達に手伝わせながら食事の世話をし、生活指導をしているから、同じ時間を共有したいようだ。


精一と正一、それと宮本常男という職人は揃って65歳。


先代・野崎源次郎が鳶を辞めた年、最後の見習いとして入って来た男たちだった。


孝太が野崎組を名乗ってから,道子が探し出したのだ。


当時三人とも惨めな暮らしをしていたが… 今では若い衆から慕われる幸せな職人となっている。


野崎の見習いは,ほとんどが施設出身者、肉親の顔も知らない者が多い.

職人としては高齢の正一や精一を親のように慕っている。


広志にとっても精一は初めて出来た家族だ。


いつまでも父を独り占めしなくても生きていけるが、一生を掛けて親孝行したいと思っている。


見習い達が父を慕い、休みまでも一緒に行動したがっても気にしないように… 
慣れて来た。


が、時にはジェラシーを感じる。


だから、毎晩、精一が帰るまでは事務所に残って仕事をしている。

なぜならば、正一や見習い達が、父に上で一緒に暮らそう、と言い出しては困る、
と言う気持ちがあるからだ。


そう、広志も和也同様、世間の事には鋭く精通しているが、家族のこととなると、
理解出来ないような感情を抱く時がある。




「父さん、俺、広志さんに勉強を教えてもらう。
広志さんが同じ高校の出身者で俺、鼻が高い。
だって、知っている、広志さんは和ちゃんや悟さんのようには目立たなかったけど、
学校では三年間一番を通し、ずっと授業料免除だったって。」



そのことは今でも学内では有名だった。



「ああ、一番で入った、と言うことは聞いていたぞ。」