「そんなに大勢と… 」
黙って聞いているつもりだったが、大輔は驚いて,思わず声を出してしまった。
父は無言だ。
孝輔から,アキの男を取ったと言うことは聞いていたが…
話を聞くに付け,大輔は真理子が憎くなってきた。
母の事を口実に,自分だけが被害者面して勝手な事をして…
妊娠して困れば自殺未遂。
家族が、特に父さんがどんな気持になっているか考えた事があるのか。
真理子のお陰で,家の皆がまた母さんのことを思いだしている。
おまけに孝輔があんな事に…
大輔は元々好きではなかったが、姉が心から憎くなっていた。
「医者には今妊娠四ヶ月だと言われた。中絶するなら早くした方がいいな。」
父は保護者として,医者から告げられた事を広志に話している。
妊娠四ヶ月… 家に戻ってからの真理子をまともには見ていない大輔は,不思議な気持になっている。
「真理ちゃんは何と言っているのですか。」
「広志、真理子はまだ18だぞ。中絶しか無いだろう。」
広志の言葉に,父は当然のように中絶と言ったが、
その時の広志は,何があるというのか不可解な表情をしていた。
そして報告は以上と言う事で、広志は事務所に戻って行く。
その後姿を見ながら、大輔は、広志がすぐ家に帰らないことを願っていた。

