ツインの絆


「ただいま。」



二階に居る孝輔の耳にも、大きな大輔の声が聞こえた。


そしてすぐに,大輔の足音が孝輔の部屋に向かっている。


父が戻っていないから、夕食にはまだしばらく時間がある。



「孝輔、どうした。」



大輔はノックもせずに孝輔の部屋に飛び込み、
頭から被っている布団を剥がして孝輔を見た。


そして大輔が見た孝輔のその顔は… 
見たこともないほど蒼ざめ、涙でグチャグチャだ。


ずっと泣いていた事の証明だ。


「孝輔、何があったのだ。話してくれなければ分らないじゃあないか。
さっき孝輔は俺を呼んだ。そうだろ。俺には泣いているように聞こえた。
だから急いで帰って来たのだ。まだ父さんは帰っていない。
今なら時間があるから話してくれよ。

大体その顔色、このところ顔色が悪いと思っていたが、まるで病人みたいだ。
幸いばあちゃん達は真理ちゃんのことに気が行っているから感じないようだが、
俺は心配だった。俺は孝輔と一心同体だ。全部話せよ。」




大輔は孝輔を抱えるようにして起こし、鞄から自分の汗の沁み込んだタオルを出し、
涙でぐしゃぐしゃになっている孝輔の顔を拭いている。


今までも、いじめに遭い泣いていた孝輔を助けた事はあったが、
こんな恐怖に慄き,儚げな孝輔は初めてだ。


確かに孝輔は自分と同じ時に生まれた双子だが、今の孝輔は紛れも無く愛おしい弟だ。


その弟がこんなに苦しんでいる。


こんなに涙を流して… とにかくずべてを聞き出して、
父や家族は他の事でも大変な時期だから、孝輔は俺が守る。


大輔はその時はっきりと心に刻んだ。


孝輔もその大輔の行為に… 
不思議とそれまで支配されていた恐怖から解放されているような気持になっている。


自分はあれほど大輔の好意を避けていたのに… 


大輔の温かさを感じ、次第に落ち着いて来た孝輔はこれまでの事を素直に話した。


大輔の好意をはねつけた事の侘びも含めて、
今、自分の置かれている、心細い,絶望しかないような世界を包み隠さず吐き出した。