大輔はそんな事を考えながら、心の声が導いてくれるかのようにその方向へと自転車を走らせている。
そして自転車は駅の裏側、それも人気の無いまだ草むらが残っている暗いところへ来た。
「餓鬼のくせに、思い知ったか。こんなもの、こうしてやる。」
「止めろ… 」
大輔が人声に気付いて近付くと、空き家の裏手から数人の男の声に混じって孝輔の弱々しい声が聞こえる。
「孝輔、どうした。」
大輔は自転車を投げ出し、いつも持っている竹刀を握りしめ裏手に回ってみた。
すると空き家の裏庭辺りに孝輔が倒れ、男が孝輔の大切なバイオリンを踏み潰そうとしていた。
それを見た大輔は、
「孝輔のバイオリンに何をする。許さないぞ。」
言うが早いか手にしていた竹刀で男の胴を突き、すかさず足を打ち据え、バイオリンを拾い上げた。
「孝輔… 大丈夫か。」
大輔はそう言いながらバイオリンを孝輔に渡し、雨戸がはずされているところから中を見た。
するとそこにも男が一人、口に何かを突っ込まれ、声が出ないようにされた女子高生を押さえ込み、制服を脱がせようと悪さをしていた。
「あいつ… 」
「大輔、危ない。」
大輔が部屋の中に神経を集中させた時、三人目の男がいきなり後ろから鉄パイプのようなもので襲って来た。
剣道が強いと言ってもこんな喧嘩はしたことが無い大輔、目の前の相手には容赦はしないが後ろにもいたとは… 油断があった。

