「大輔、何の権利があってそんな事を言うのだ。僕が誰と付き合おうが大輔には関係ない。早く出て行け。」



こんな孝輔は見た事が無い。


こんなに興奮するとは… やっぱりあの話は本当なのか。


いつもおとなしく、声を荒げた事の無い孝輔が、自分に対してこんな態度をとっている。


大輔は驚くと共に悲しくなって来た。


よほど河村アキと言う女が好きなのか、いや、絶対に騙されているのだ。


とにかく河村アキは駄目だ。


何とか彼女の本性を孝輔に分からせなくては。


大輔は出て行けと言われたが、とにかく自分の知識を全て、孝輔に伝えたかった。




「孝輔… 俺、今日まで知らなかったけど、孝輔は河村アキという女と付き合い、無免許運転の車に乗ってラブホテルへ、って言う話は本当なのか。
日曜日の事らしいが… 今日、見た奴が話してくれた。
俺… ショックだったよ。だからこうして確かめている。
ラブホテルだなんて… 高校生の俺たちが出入りするところじゃあない。
もし本当だとすれば、父さんに対する裏切りだ。ばあちゃんが聞けば悲しむ。
あの時の悔しさを忘れたわけじゃあないだろ。
あれ以来真理ちゃんはまともではなくなった。真理ちゃんは今男と一緒にいるみたいだ。その内に父さんが迎えに行くらしい。
父さんこそ一番の被害者なのに父親だから… かわいそうだよ。
だけど父さんには和ちゃんがいるから頑張れるって。
でも普段は俺たちの事を見ていてくれる。
だから少なくとも俺たちは、父さんに心配かけないようにすべきだと思う。
孝輔は母さんっ子だったから… だから俺、必要以上に気になっているのかも知れない。だけど今までは二人で頑張って来たじゃあないか。
どうして急に、あんな河村アキと付き合うようになったのだ。」





いくら大輔が話しても、孝輔は背を向けたまま、貝の様に口を閉ざしてうつむいている。