この二人ほど仲の良い双子はいない、と親として自負していたところに,何となく不調和音が流れ… 
顔には出さなかったが孝太も気になっていた。


勿論親の自分が聞いても正直に話すことは無い、と言うことも分っていたから何も言わなかった。




「別に構わないけど… 」





そう言って孝輔はそのまま部屋へと上がって行った。




「孝輔、悪かったな。すぐ終わるから。」





大輔は少し遅れて孝輔の部屋に入った。


そして机に向かっている孝輔の背中を見ながら,声をかけベッドに腰を下ろした。


孝輔は机の上に両肘を付き、拳を作った手を軽くぶつけ合っている。


スタンドの光の中、拳を握りしめた手だけがはっきりと見える。


大輔が話しかけても孝輔はそれまでの動作を止めようとはせず、相変わらず拳をぶつけ合っている。やはり大輔と話をしたくないようだ。



「孝輔、今日俺、練習中におかしな体験をした。
いきなり身体中のチャクラが消えてしまったように無気力状態になり、俺より完全に弱いはずの奴に負かされてしまった。
あんな事は初めてだから考えた。
そしたら最後には孝輔の顔が浮かんで来た。
あれは俺たちの特別なつながりが為せる業、孝輔に何かがあったのかも知れないって。」




大輔がそこまで言うと、それまで背中を向けていた孝輔が怒ったような顔をして大輔を睨んで来た。




「うっとうしいよ、大輔は。
どうしていつまでも僕のことを干渉しようとするのかなあ。
僕は確かに戸籍の上では弟になっているけど,同じ時に生まれた双子で、大輔と同じ一個としての存在だよ。
手をかけて貰わなくても何でも人並みにできるよ。」



孝輔らしからぬ言い方に躊躇するものの、大輔も自分の感じている事を全て口にしたかった。


第一こんな孝輔も普通では無い… やっぱり何かあるのだ。