ツインの絆

大輔は木村の言葉に反応し、鋭い眼差しで睨むような顔を向けた。


「木村、お前、孝輔の事で何か知っているのか。」


その言葉に木村は一瞬躊躇うような顔をしたが…　大事な試合を前にして、こんな様子の大輔では困ると思ってか、意を決したような,真面目な顔をして大輔を見た。


個人戦は当然だが,この調子なら団体戦も上位に入れそうだ、と顧問の高木から先週言われ、皆も盛り上がって来ていると言うのに、その中心的存在の大輔が,心ここにあらず、では全体の士気に関わると言うところだ。


ちなみに、木村は新しく主将になったところ,全員のまとめ役にも尽力していた。



「うん…　実はな、日曜日に見ちゃったよ。」



大輔に睨むように見つめられ、木村は戸惑いを浮かべた顔をしながら口を開いた。



「何を。」


「うん…　あの弟が河村アキの車に乗って。」


「誰だ、その河村アキって。」



孝輔が女と…　それはそれで驚きであるが、悪い事ではないはずだ。


それなのに、何故こいつは意味ありげな顔をしているのだ。


大輔は怪訝そうな顔をして木村を見ている。




「何だ、野崎、知らないのか。」




それまで二人の会話には口出ししないように,黙って話を聞いていた山田が、驚いたような声を出して話に入って来た。




「ああ、知らん。どんな女だ。」




大輔の返事に、木村と山田は顔を見合わせ躊躇している顔をしている。


が、このままでは進展が無いと思ってか話を続けた。




「河村アキと言うのは一年上の女で、中学の時から時々補導されていたどうしようもない不良だよ。
今はどこかの女子高生になっているらしいが、どうせまともには通っていないだろうよ。時々チンピラのような男たちと,戸崎のショッピングモールの裏辺りでたむろしている。無免許で車を走らせて…　その事でも警察に捕まったらしい。」