ツインの絆


「あの… 車はどこですか。」



アキが高いヒールのブーツを履いて,菅生川の南側の土手を歩いている。

しばらくは黙って歩いていた孝輔だったが,昨日の真っ赤なスポーツカーを思い出して聞いてみた。



「車、そう毎日運転していたらまた捕まってしまうじゃあない。 そうなれば親がうるさいし… 分らないようにたまに乗るのよ。」


「捕まるって、誰に捕まるのですか。」



孝輔のその反応に,アキは蔑んだような目つきをして,吸いかけのタバコを道に捨てた。


「あんた、それ本気で聞いているの。」


「すみません。」


「ふん、鈍い子ね。私は17だからまだ免許は無いの。だけど運転は出来るから時々親の車を走らせて、もっとも既に三回警察に見つかって,親に通報されているから慎重にしないとヤバイでしょ。」




孝輔は河村アキが17歳と言う事でまず驚き、無免許で何度も車を運転して三回も警察に捕まった、と聞いてまたまた驚いた。


大人かと思っていたアキが自分より一歳上だけだったとは… それなのに平気でタバコを吸っている。


不良だ… こんな人と関わってはいけない。

早く帰らなければ… 孝輔の心はそう叫んでいるが、しかし不思議な事に足はアキに合わせて歩いている。




「サンドウィッチと飲み物でも買ってあそこへ入ろう。」



しばらくすると,アキは食べ物を買って駅の近くのホテルを指差した。

ホテル… そう恋人達が利用するラブホテルだ。

ラブホテル… どうしよう。

その時の孝輔は気が動転して、何も考えられず、ただ歩くだけで必死だった。