ツインの絆


多分顔にもその心が表われていたのだろう。

いきなり女の口調が変わった。



「アホクサ。あんた、学校をサボってぶらついていたじゃあないか。何を今さら真面目くさった事を言っているのさ。」


その態度に驚きうろたえた孝輔… 



「そんな… でも、僕… 」



孝輔がそこまで言った時だった。

アキは康生では三車線だった通りが一斜線になっている路上で車を急停車させた。


その非常識な行為に驚いて顔を見た孝輔の髪を、アキは乱暴に掴み,自分の方へ引き寄せ、呆然としている孝輔の唇を奪った。


そう、まさにその表現が妥当、としか言えないような行為だった。


後ろの車にクラクションを浴びせられて,アキは一瞬後ろを睨み、孝輔を見てニヤッといやらしい笑いを浮かべ発進させた。



いきなり女がキスをして来た。


その瞬間,孝輔の中で全てのものが驚きのあまり狂い出した。


心臓は車外にまで聞こえそうなほど暴れ回り、顔は火がついたように熱くなり、体は熱くなっているのに震えている。


頭の中は真っ白だ。


「ウブねえ。いいわ、その方が可愛いわ。」



固まってしまった孝輔に,アキは意味ありげな言葉を浴びせ、ハンドルを左に切った。


伊賀川の堤防を南東に向かえば孝輔の家がある城近くの一号線に出る。


車内の孝輔は緊張したまま,黙って前を向いている。


それが精一杯の自分の出来る事だった。


そして車が見慣れた家に近付いた時、アキはやっと車を止めた。