孝輔…  孝輔に何かあったのか。


こんな事は初めてだが… 


そう言えば母の葬式の時、あの道子おばさんが初めて僕達に話しかけて来た。


いつもは兄の和也しか見ていないようなおばさんが、涙を堪えて泣いていた僕と孝輔の所へ来て…

 
双子と言うのは神経を研ぎ澄まして相手の事を考えれば、必ずお互いの気持が通じるもの、要するに絆が強い。


親を亡くして悲しいのは当たり前、悲しい時は思いっきり泣いた方がいい。


それからは、後に残された父や祖母たちの事を、二人のその力で見守ってくれ、とか言った。


俺は今どこも怪我をしていない。


それなのにこんな事が起こるとは… 


まさか、孝輔に何か… そうに違いない。


そう思った大輔は、山田の存在を忘れたように、一目散に自転車をこぎだした。



本当に不思議なことだが、その時は無心に孝輔の事を考えながら自転車をこげば
目的地に到着できるような気持ちだった。



「野崎。」


山田は訳もわからず慌てて大輔の後に続いたが… 


大輔が国道一号線上にある自分の家を通り越して、東岡崎駅の方へと驀進しているのを見て諦めた。