ゆくゆく大ちゃんは株式会社野崎組を継ぐ。


このままこの家に住み… 
父さんと一緒にずっとここで暮らす。


僕は… 僕はどうなっているだろう。


何になっているのだろう。 


少し前の僕なら、
バイオリン弾きになり世界中を公演しながら回っているかも知れない、と想像できた。


どこかの楽団に所属していろいろな国へ演奏旅行… 
そういう音楽家になりたかった。


だけどその夢は見事に壊れてしまった。


これからどうしたら良いのだろう。


父さんは、名古屋では遠いから岡崎のどこかへ移ったらいい、と言っていた。


どうせ退学になるのだからそれしかない。


このまま中卒で終わって、僕に何が出来るのだろう。


とびの仕事は好きではないし、
多分出来ない。



いろいろな事が頭をよぎり… 
孝輔は腹の辺りに痛みを感じ、
その内に身体中の筋肉がこわばり、自分を締め付け、
まさに苦痛の中で心身ともにもがいていた。


孝輔に知識は無かったが、強度のストレスだ。


痛い… このまま心臓も締め付けられて止まってしまうのか。


その方が良いかも知れない。


大輔には誇らしい将来の設計図がある。


それに比べて僕は… このままずっと大輔の笑顔を見ながら落ちこぼれていく。


嫌だ。

そんな日々を送るのなら、
このまま心臓が止まってくれた方がいい。


孝輔は流れ出る涙を拭きもせず自分の将来に悲観していた。


自分に比べ大輔は… 初めてはっきりと口に出したことが、
父や広志に喜びを与えた。


それを目の当たりにした孝輔の喪失感… 
同じ時に生まれた双子と言う運命が呪わしかった。


同じ顔の人間は一人で良かったのだ。


なまじ双子だから、もう一人の自分を意識してしまう。