「あとで思えば、あれが… 脅しを掛けて来たと言うのか。
俺もあの時は酒のせいでいい気分だったから、
何故怒鳴られるのか分らず、反射的にあきらを睨んだらしい。
俺は覚えていないのだが…
山ちゃんの話では、あきらの奴、
しばらく俺と睨めっこをしていたが、その内に消えた。
ところが、翌日俺たちが巽に…
その頃はまだ巽工業と言う土木が専門の会社の、正社員ではなく、
一応名前を連ねるとびとして働いていた時分だ。」
「矢作の巽ですか。」
広志だ。
不景気な時代が続き、一時は仕事が無くて倒産しそうだったが、
道子の一言で… ほとんどの基礎はあそこに声をかけている。
昔の野崎はトラックやダンプカー、材料も扱っていたが、
今はとび職人だけ。
基礎仕事に使うほとんどの機材は、仕事を回した巽興業や、
他の建設会社の作業員共々雇う形で、上手い形で動かしている。
今、そういう全ての事を考えているのが広志の仕事だ。
「そこで俺たちは、仕事を仕込んでくれていた徳さんを中心に、
何となく組のような気分で働いていたのだが、
その俺らの前にあいつ、現われやぁがって、
子分にしてくれ、と何を勘違いしていたのか分らんが、
土下座などして…
それからは俺の後を一時も離れず、だ。」
子分… 土下座… やっぱりやくざみたいだ。
あきらさんなら絵になるが… 父さんや山根のおじさんは…
大輔と孝輔は、映画を見ているような気分になっている。
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