「そうか、まだ先だな。頑張れよ。」


「うん、ベストを尽くす。」



大輔は笑みを浮かべた顔をして父を見て祖母、曾祖母、そして孝輔を見た。


が、その時の孝輔が無理に作り笑みを浮かべたのが気になった。


いつもは素直に応援してくれる、一番の理解者だったはずなのに… 腕が痛いのかと心配にもなった。




「孝輔、飯が済んだら裏の長谷川さんへ行ってその腕を診て貰うぞ。右腕だから気をつけなくてはな。」



孝太はお茶を飲みながら思い出したように孝輔を見た。


長谷川さんと言うのは同じ町内で細々と開業している、何でも屋の整形外科医院だ。


市内の中央に位置している開業医だから、さぞかし繁盛しているだろうと思うが… 昔からの中心地だった城の近くは、大きなマンションが立ち、様相は変わって来ている。


マンションが建つと言う事は人口の増加を意味し、それに伴い近くに大きな外科専門の病院や総合病院も出来てきた。


おまけに最近では美容整形を兼ねた医院や、クリニックと称すモダンなものも中央ならばこそ軒を並べるようになった。


とにかく、昔ながらの長谷川医院はいつも閑古鳥が鳴いている。


だからこそ、いつでも診て貰えるという利便性もある。


最近は息子と代替わりしたが、そこの長谷川洋介も道子の幼馴染という事を朝子から聞いて以来、孝太は職人達に何かあればすぐ、長谷川さん、と言って行かせている。