「大輔、野崎を見損なってはいけないよ。
野崎はいつも進歩している。
源次郎頭が流れ鳶から身を起こして、
岡崎に野崎組を作り名声を博した裏には、
綾さんと言う、奥さんの援護があった。
綾さんと言う人はすごく頭の良い人だったらしい。
家康が岡崎のような小国から天下を取れたのも、別に彼一人の功績では無いよ。
周りに優れたブレーンがいてこそ出来た事。
僕たちも、いくらとび職として看板を上げていても、
野崎組はどこにも負けない人材がいる、
と言う自信の下に進歩し続ける集団でいたい。
それには建築に関わる以上独自の建築士もいなくてはならない。
受けた仕事が確かな図面の元に動けるか否かを判断する眼は必要でしょ。
今は図面の読めないおじさんが、分る振りをして鳶の目でじっと見つめて…
長年の勘だけで返事をしている。
あきら兄ちゃんがその場にいても大して代わりは無い。」
広志は家康崇拝者の道子が、
口癖のように話していたことまで言葉に出している。
孝太や山根が仕事を受ける時に、会社が持って来た図面を、
念のため、と言いながら厳しい鳶の目をして食い入るように見つめ、
二人で何事か囁き合ってから返事をしている、その事を言っていた。
道子曰く、あれは源次郎のパフォーマンスだ、
図面など読めないのに分る振りをして鳶の目で見つめる。
さすがに孝太は源次郎の二代目だ、と言うことらしい。
そして、野崎組のブレーン、と自他共に認めている広志を初め悟や和也は、
その話が大好きなのだ。
自分たちは鳶の化身に認められた鳶の子、
という自負と共に野崎組を見守っている。
世間の目など気にしない。
野崎の鳶の子、それが自分たちのプライド。
それが重要なのだ。

