「当たり前だ。皆とび職の父親が大好きで尊敬している。
が、悟は生まれつき体が弱かった。
今では成長してあんなに背が伸びているが、
どう逆立ちしても体力が必要な鳶の仕事は無理だ。
だからあいつは親を、自分の治療費のための貧乏から解放するには、と考えて、
弁護士として稼いでいた亜矢可さんを見た。
5年生で弁護士になろう、と考え勉強した。
広志も同じだ。あいつも貧弱な子供だった。
今でも長時間勝負の体力には自信が無いのだろう。
子供の頃から悟は弁護士、和也はビジネスマン、と
まあ、和也はどこまで分っていたのかは分らないが、
とにかく口癖のように言っていた。
いきなり、そんな中に入ってしまった広志だ。
広志は、あいつは岡崎に来て生まれ変わった、
と言って岡崎から離れなくなった。
それで今のあいつがある。
和也は… あいつは体こそ小さかったが別に健康に問題は無い。
しかし、一つの事をしていても他に興味が出来るとサッと力を抜いてしまう癖がある。
集中力はあるのだが、持続力が無いと言うのか…
疲れるとどこででも眠ってしまう癖もある。
悟たちはそれらも含めて和也を愛してくれているが、
とにかく高所の仕事中に手を休め、他の事に熱中されても困る。
怪我でもされたら大変だから、な。
これはおばさんが一番初めに察した。
たぶん、あいつはおじさんの仕事を受け継ぐだろう。
それはあいつらも承知だ。
それと、あきらは、おばさんに見初められた正真正銘のとびだ。
だから今の俺の後釜はあきらしかいない。」
孝太ガどんな気持でそんな事を話すのか分からなかった。
が、大輔は野崎組に居場所の無い自分を思い描き、
心がしぼんでいるのが分かった。
問題は和也の気持ち、父は喜んでくれると思っていたのに…

