「あきらさんの人生ってすごかったのですね。」



大輔が興奮した顔をして父を見ている。



「まあ、あきらほど派手に知られている者はいない。
野崎組には多かれ少なかれ、人生に絶望した経験を持っている奴は多い。
そして今は野崎の仕事に誇りを持って生きている。

俺も含めて皆、野崎組をそういう心の拠り所にしたいと思っている。
お前の人生だから俺がどうこう言うつもりは無いが、
お前が将来野崎組を守る一人になってくれたら嬉しいと思う。

まだ高校生だからゆっくり考えたらいい。広志、行くか。」



そこまで話すと父は、家に戻ろう、と広志に声をかけた。



「はい。支払いは済ませていますので車へ行きましょう。
おじさんは挨拶して来てください。」




家に戻り孝輔は祖母たちに涙の中で迎えられ… 
しばらくはテーブルを囲んで、居心地の悪い状況の中で耐えていた。


そう、病院では… 
野崎組の話で盛り上がり、自分のことなど消えていた。


気がつけば家に戻っていた、と言う感じだったが… 

すぐ部屋へ行っても良いだろうが… 
気持ちの優しい孝輔は、自分のことで心配をかけた
祖母たちを放っておいて、二階へは行けなかった。


用意しておいてくれたミルクティーやケーキに、作り笑いをしながら食べ、
その場の雰囲気を必死で和ませていた。


大輔も怪我人だったが、いつも元気な大輔が腕にギブスをつけていても、
祖母たちはおとなしい孝輔の方を心配していたようだ。



「孝輔、疲れただろう。
ばあちゃんたちも心配していたのだから仕方が無いが… 俺は疲れた。

だけど、さっきの話で俺、将来の道は決めた。
俺、今度和ちゃんが来たら聞いてみる。」



やっと二階に戻れた時、大輔は孝輔の部屋に一緒に入り、
早速病院での話の続きを孝輔にしている。