その時あきらが目を開けた。


それはまさに猛禽類を彷彿する眼、
その鋭く不気味な眼光で男を睨んだ。


そして、不思議なことだが、あきらに睨まれているガウンの男は、
いきなり体が金縛りにあったように動けなくなっていた。


勿論ピストルも… 握ったまま指が動かないようだ。


慌てて声を出そうとして、も思うように出ないらしい。


何が起こっているのか分からないが、あきらに睨まれたまま、
男の顔だけが七面鳥のように赤くなったり青くなったりして、脂汗まで浮かべている。


が、何も音の無い静寂の世界だ。


と思っていたら、ガウンの男はいきなり天上に向かって銃を発射した。


それを合図のように、あきらのパンチがとんだ。


ガウンの男の後ろに立っていた男は、その様子に意味が分からず… 
何となく不気味な感情に襲われ、
慌てて刀を振り上げながら逃げ出そうとした。


が、完全に気後れしたその動きはまるで、でくの坊… 
その男は広志の獲物だった。


あっと言う間に倒され床に倒れた。




「終わったな。」


「あきら兄ちゃん、それって鳶の眼力。」


ガウンを着た男が、ピストルをあきらに向けた時から生じた不可解な現象に、
広志は心に浮かんだ事を口にした。



「ああ、会長が俺に教えてくれた。
お前たちにもその兆しはあるらしいぞ。

命の危機に陥った時は、俺たちは鳶の化身に守られたとびの子、
雑念を追い払って鳶を呼べば、力を与えてくれるらしい。

しかし、この力は野崎を守る事にのみ威力が出る。
とにかく俺たち4人は精神的には会長に育て上げられたようなものだ。
会長の意志を忘れるなよ。」



4人とは勿論、あきら、悟、広志、そして和也だ。



「はい。これからどうするの。」


「なあに、もう警官達が来る頃だ。こいつを渡してやれば喜ぶさ。
俺たちは帰ろう。」