あきら兄ちゃんの方針が分った。


初めに相手を萎縮させておいて、聞きたい事を尋ねる。


そうすれば、一度やられているから二度とごめんだ、
とばかりにスラスラと尋ねられた事は口にしてしまう。


これがあきら兄ちゃんの喧嘩道なのか。


広志は感心しながらあきらの顔を見た。


その時だった。




「薬を横取りしようとは良い度胸だ。お前ら、どこのもんだ。」



多分三階から下りて来たのだろう。


ゴールド系の派手なガウンを羽織った大柄な初老の男が、
手にピストルを構えて立っていた。


後ろにはパリッと背広を着た男が左手に黒い鞄を持ち、
右手にまたもや刀を握っている。


二人とも目つきの悪い、いかにも悪人を連想させる雰囲気だ。



「俺たちは野崎のもんよ。ははーん、その鞄にヘロインか。
こいつはちょうど良い。探す手間が省けた。
広志、逃がすなよ。」



野崎のもんよ、などと、あきらはヤクザ顔負けのドスの聞いた言葉で応じた。



「お前ら、こいつが見えねえのか。もうおしまいだ。」



ガウンの男が勝ち誇ったような顔をして、ピストルをあきらに向けている。


が、何故かあきらは動じようとはせず、
ちょっと足を開き加減に真っ直ぐに立ち、
目をつむり何かを念じているような格好をしている。


それを見た広志も同じような格好をして、
鞄を持っている男に向かい立っている。



「観念したのか。しかしもう遅いぞ。
これだけの事をしてくれたのだからただではすまさねえ。」



ガウンの男はそう言いながら薄ら笑いを浮かべ、
銃口をあきらに近づけた。