「知った事か。無ければ借りるなり、盗むなりしたら良いだけのことだろ。
簡単な事ではないか。」
「そんな… やっぱり無理です。」
男たちの見ている前で泣きたくは無かったが…
元々蒼ざめていた顔は蒼白になり,絶望感から震えが来ている孝輔だ。
さっき口にした、殺せ、の文句などすっかり消えている。
「じゃあ、今日の分はこの借用書に書きな。来週まで待ってやるよ。
しっかりと自分の名前を書いておきな。
期限までに払わないと利子が付くから気をつけなよ。」
アキは不敵な笑みを浮かべながら、
手慣れた様子で借用書を孝輔の前に突き出した。
そして、男たちに囲まれた形で、
孝輔が震える手で何とか名前を書くと男の一人がむしり取った。
代わりに孝輔の手にヘロインの小袋をつかませた。
アキを初め男たちは初めからこういうシーンを想定していたようだ。
その時の孝輔は、事の展開に驚く間もなく、絶望の淵に投げ込まれていた。
魂は抜け、立つのも困難なほどの虚無感に支配されていた。
「孝輔、どこだ。」
遠くから自分を呼ぶ声が聞こえる。
もう自分は野崎孝輔ではない、
絶望していた孝輔はその声に怯えた。
心配してくれた大輔や広志さん、
そして父にこんな自分を見られたくない。
一瞬そんな思いが浮かび…
孝輔は発作的に手にしていたヘロインを全て口に流し込んだ。
「あ、こいつ。」
その孝輔の行為に驚いたのは高井だった。
アキや男たちは意味が分からないようだが…
その瞬間、あきらと広志が飛び込んで来た。

