「回転の悪い甘ちゃんだねえ。
薬の顧客リストに決っているじゃあないか。
だからお前はこれから毎週ここに来て薬を買う。
今まではサービスだったけど、これからは正規の金を払ってもらう。
特別の代物だから安くは無いよ。」
「嫌だ。僕はただ大輔に手を出すな、と言いに来ただけだ。
家族に何もしないでくれ。僕のことは放っておいて…
いや、こうなったら殺してくれ。そのほうがよっぽどましだ。」
しかし、初めは興奮していたから口調もはっきりしていた孝輔だったが、
アキが近付き,孝輔の頬を撫でると…
次第に声が弱くなり、哀願するような口調に変わった。
まるで、自分の意思とは無関係の、飼いならされた猫のようだ。
孝輔がそんな虚無感に陥り、自分自身に戸惑っている時に、アキの様相が変わった。
そしていきなりアキは孝輔の頬を平手打ちした。
「ごたごた言うんじゃあないよ。
お前さえ素直に金を出して薬を買えば何もしないさ。
心配しなくてもすぐに自分から欲しい,売ってくれ、と言うようになる。
和男、こいつに一週間分渡して。
代金は20万。さっさと用立てて来るのだよ。」
アキはその場を仕切っている女ボスのように、傍に居る高井和男に声をかけ、
そして孝輔を睨んだ。
「20万… そんな金は… 」
仕方が無い,自業自得とあきらめて買うだけは買おう。
そうしなければ家族に災いが… と思い孝輔はあきらめた。
買って、すぐに捨ててしまえば良い、と思っていた。
しかし額を聞いて驚いた。
世間知らずと思われようが、孝輔にとっては想定外の高額だった。
小遣いと貯金で何とか、と思っていたが、
一週間で20万… とんでもない。
そんな金はとても出きるはずが無い。

