孝輔はおとなしく自分を信じていた。
大輔に頼られ、大丈夫、うまくこなせる、と思っていた。
それなのに、肝心な時に孝輔を見失うとは…
孝輔は,自分のために大輔が襲われ、
きっと次もある、と恐怖を感じてしまったのだ。
それで一度決めた決心を破る事にして、あの女の所へ行ったのだ。
あれほど,さっきはきっぱりと断わっていたと言うのに…
予測できた事なのに、と思えば、いつもは冷静な広志でも…
その頃孝輔は、広志の想像通り駅裏のスナックに来ていた。
そこには大輔を襲った男たちも、アキとビールを飲んでいた。
「アキさん、ひどいじゃあないか。どうして大輔を襲ったのだ。
大輔は大事な試合を控えているのだぞ。
それなのにあんな乱暴な事をして…
僕はもう断わったはずだ。
ヘロインなんかお断りだ。」
大輔が襲われた事で,孝輔も完全にパニックに陥っていた。
薬の副作用に苦しみながらも、
とても言葉では言えない事だったが、
アキの体を思い出すこともあった。
いくら憎んでも… 脳裏にへばりついているようだった。
それでも、あんなに大会に向けて練習していた大輔を…
許せない。
自分は力も無いが、
このまま殺されても構わないという気持ちもあった。
いや、殺されたほうがよっぽど良い。
そうでなければ大輔に申し訳ない。
「ふん、威勢が良いじゃあないか。
お前が何と言おうと、お前はもう、
こうしてヘロイン常習者のリストに入っているのさ。」
アキはせせら笑って黒い手帳をかざした。
「リスト… 」

