「わあー。」
アルバムに没頭していた孝輔は、右肩にいきなり痛みを感じ、
思わず叫び声を出してしまった。
「孝輔、どうした。」
慌てて広志が孝輔を見ているが… 孝輔は右肩を抑え、
痛みが激しいのか額には汗まで滲んでいる。
「広志さん、大輔が、大輔に何かが起こっています。行かなくては。」
そう言うと孝輔は、スニーカーをはく時間も欲しいように手に掴み、
学校の方へ走り出した。
訳は分らないものの、広志も孝輔の後を追っている。
その時の孝輔、さっきは家並みの小道を歩いていたが、
今度は真っ直ぐに矢作川まで行きその堤防を走っている。
こんな道は遠回り、この場合少しでも近道をと思うのが常識だろうが、
不思議と大輔を案じる孝輔の心はこの道に導かれた。
遠回りになるが、自転車通学をしている大輔は、
気ままに走れるこのコースをいつも選んでいた。
そんな事は知らない孝輔のはずだったが、二人の絆がそれを告げているようだ。
しばらくすると前方に見覚えのある真っ赤な車が飛び込んできた。
アキが大輔に…
そう思うと孝輔は雷に打たれたような衝撃的な震えを覚えた。
大輔が僕の代わりに…
「止めろ、止めてくれ。」
孝輔は泣きながら走っている。
が、あと100メートル、と言うところで、車は急発進して行ってしまった。
孝輔の耳にはアキの不気味な高笑いだけが残っている。
そして孝輔は、土手にうずくまっている大輔を見て、
体が金縛りにあったように動かなくなってしまった。

