「大輔、すごく気合いが入っているね。僕、感心した。」
孝輔は自分の気持ちの半分ぐらいの事を言葉にしている。
「本当か。広志さん、孝輔を連れて来てくれてありがとうございます。
孝輔はこういう練習風景は初めてだろ。
今から個人練習、試合形式でやるから見ていてくれ。
皆一本で決めるから。」
大輔は二人の訪問が嬉しいらしく、なかなか皆の方へ戻ろうとはしない。
窓を挟んで中と外で顔を見合わせ…
大輔の額の汗が爽やかに映るのは孝輔だけだろうか。
「館山君、良かったら中へ入って、あそこのイスに座って見たらどうだ。」
いつの間に来たのか、顧問の高橋先生が大輔の隣に立ち、
窓の外に居る広志に声を掛けた。
剣道部顧問の高橋までも広志の事を覚えていたようだ。
「はあ、でも練習の邪魔になりませんか。僕たちはここで結構ですよ。なあ、孝輔。」
「はい。」
広志はともかく、孝輔は事の成り行きに当惑している。
自分が他校の体育館に。
校庭に入るだけでも憚られると言うのに中まで…
一応は断わったが…
本番は大勢の観衆の前での試合になるのだからと言われ、
少しだけ中に入って見せてもらう事にした二人だ。
確かに大輔の動きは他の仲間とは違っている。
竹刀の振り方も鋭さが感じられ、大きく力強い。
大輔がいるという事で、間じかに迫っている地区予選、
学校側が期待しているのも頷ける。
もちろん個人戦で、大輔はかなり上位に残るはずだ。
大輔の動きを見ていると、不思議なことに、
孝輔の体内にも熱い血潮が宿るような感覚を覚える。
自分も思いっきり体を動かしてみたい。
そんな気持が生じて来る。
が、現実の自分は… 大輔の躍動感溢れる動きを見入りながら、
孝輔は自分の情け無い姿を思い出し、泣きたいような衝動に陥ってしまった。

