「高校中退… そんな事を考えるのはもっと先の事だ。
まずは孝輔の症状を案じるべきだろう。孝輔にヘロインを飲ませた、
そのアキと言う女の方は、広志がかたを付けてくれる事になっているのだな。」



孝太は息子の和也を含めた悟、広志の三人を… 実際は全くの他人なのだが、
道子と同じように実の子供のように考えているところがある。


特に今は、いつも野崎の仕事をしている広志を完全に信頼している。


大輔もそれは分っていた。


だから広志の名前を出せば父が安心すると思ったのだ。




「うん… ヘロインが絡んでいるからあきらさんも一緒に。」




ところが、大輔が広志の言葉を思い出して、あきらの名前を出した時、
孝太は慌てた声を出した。




「馬鹿、あきらが行けば大騒動になるぞ。」



内心、野崎組は自分の跡はあきらが居れば安心だ、と思っている孝太だが、
こういう時にあきらでは… その先に何が起こるか。


そんな事は火を見るより明らかだ、と言う顔をして大輔を見た。




「だけど広志さんは、見張っているから大丈夫、と言っていた。」




大輔は慌てて、また広志の名前を出した。



「まあ、広志がそう決めたのなら間違いは無いだろうが… しかし大輔、
どうしてそんなに大切な事を、まず父親の俺に言わなかったのだ。
俺はそんなに頼りないと思われているのか。」



父は状況を飲み込み、その話は納得した顔をしたが、
すぐ改めて、大輔を見て情け無さそうな顔をしている。



「そうじゃあないよ。俺、父さんに余計な心配はかけたくなかった。
真理ちゃんのことで、とても心痛そうな顔をしていたから、これ以上は駄目だ、と思った。
大好きな父さんに何かがあっては嫌だから、俺が何とかしようとした。

でも一人では何も考えられなくて… 思い切って広志さんに相談した。
父さんにはデーンとしていて欲しかった。

それだけだよ。孝輔も恥ずかしい事をしたのだけど、父さんには知られたくないと思う。」