暗い所とか。
大きな獣とか。
お化けだとか。
……皆が怖いっていうものは、僕、あんまり怖くないんだ。
何も見えない暗闇は、敵の目から僕を隠してくれるし。
大きな獣は、実は大人しくてね、よく見たら本当は可愛いんだよ。
お化けは………よく分からない。
時々話し掛けてくる雪の精とか、風の精とは違うのかな?
全然怖くないから………周りが驚いていても、僕だけ無表情なんだ。
さすが仏頂面のザイの息子、とか……よく、言われるけど。
周りは、知らないだろうけど。
僕…。
本当は、凄い怖がりなんだよ。
凄い泣き虫なんだよ。
気が小さくて、臆病でね。
父さんがいないだけで………物凄く、不安で、怖くなるんだ。
すぐ泣いちゃうんだ。
父さんがいないなんて、考えられない。
…これからもずっと一緒だから、そんなこと無いけど。
………僕には、父さんしかいないんだ。
僕の中は、いつも父さんでいっぱいなんだよ。
母さんがいない分、全部、父さんなんだ。
父さんの事なら、僕、何でも知ってるの。
父さんね……何か、僕に隠してるんだ。
ずーっと昔から、何か隠してるんだ。
でも、良いんだ。
父さんが隠し事してても、僕は気にしないよ。
僕も……父さんに、隠し事あるから。
父さん。
父さん。
……僕ね。