………近頃、見慣れない妙な連中が、我が物顔で道の真ん中を闊歩している。


黙って道の端々に寄る街の民だが、皆顔をしかめて心底嫌そうに奴等を睨んでいる。

しかし、それ以上の事はしないのが、デイファレトの民。

喧嘩を進んでする者はほとんどいないが、影で悪態を吐く……あまり好戦的ではないが、悪く言えば陰険な性格なのだ。

だから、耳を澄ませば……別嬪の貴婦人や紳士のお上品なお口からは、何とも刺々しい言葉の数々が聞こえて来るのが当たり前。
………喧嘩、ではないが、私闘という行為ならば、狩人の世界にはある。




雪国の民は皆、いがみ合いは全てお話し合いで解決致しましょう…という何とも歯痒い精神を持つ美男美女の集まり。
………だが……それは、貴族等の上級民の場合だ。

身分が下にいけばいく程、紳士面なんて糞食らえだ、と言う荒々しい連中が増えていく。












…そう。老いぼれジジイの自分も、決して例外ではない。

殴りたい時は、殴るさ。

唾だって吐きかけたっていい。





……物が多い自分の仄暗い店に、珍しくやって来た愛想の無い数人の客を眺めながら、コムはそんな事を思っていた。


表の顔はしがない商人、裏の顔は情報屋。
何かと敵の多い神出鬼没の商人兼情報屋コム爺こと、コムタニサ=ヤナ。

彼の店は正直な話、儲っていない。

それは多分、彼が客の事など考えず自由気儘に街々を転々としている事や、表の商人としての仕事にあまり力を入れていない故にだ。
……反面、裏の情報屋はかなり儲っているため、食い扶持に困る事などこの老人にはまず有り得ない。