長谷川くんを見送って帰ると、
 お母さんから電話があった。

『千衣子ごめん、大学にいる秀哉にテーブルの上の封筒届けてくれない?』

 お兄ちゃんが忘れ物なんて珍しい。すぐ必要な書類で、お母さんに頼んでたらしい。

『今日のパートは早番の予定だったのに、意外に忙しくって! 看板娘が抜けるわけにいかないしね』

 看板娘って……自分で言うお母さんが少し寒いけど。

 千衣子行ってきてくれる〜?
 と頼まれたのだった。

 ちなみにお母さん大好物なジャ◯ーズ系の俳優が出てるドラマの予約もお願いされた。

そして今、
 あたしは道に迷っている。

 人生の……。とか格好よく言いたいとこだけど、確かに最近色々あって目まぐるしい毎日だけど、そうじゃなくて、本当に……。

 ここはどこ?
 
「広い。広過ぎる……」

 すっかり日も暮れてきて心細くなってきた。目的の場所に向かってるのに、まったく辿り着く気配がないのだ。
 
 まるで砂漠をさ迷ってる気分。蜃気楼が見えるよ。目の前にオアシスが見えるのに、全然辿り着かない!!みたいな。

 車も通れるだだっ広い道が交差してる。にょきにょきと立ち並ぶコンクリートの建物。あちらこちらにある自然そのままの雑木林。