「これ・・・浩平君の願いが叶うモノが入ってる」
女性にしては低い声で、単語の一つ一つが聞き取りやすい。正体不明で怪しい風貌ではあるが、僕的には好感が持てる人物だ。
「これをパソコンに入れて相手にメールを送信すれば、暗証番号を盗んで戻ってくる。でもね、悪用すると捕まるよ」
僕は声優の瀬戸 麻美の大ファンで、彼女が声優としてで出演するアニメは全て持っている。だからといって、アニメオタクという訳ではなく、単純に声優瀬戸 麻美のファンということだ。
「ありがとうございます」
僕はそれを受け取ると、Ｚさんの隣にあるテーブルに座った。ここが僕の定位置だ。と言うか、店内１２席全てに常連客がいる。常連客以外、ほぼ入店する人はいないため、自然と指定席ができあがる。
僕は椅子に腰を下ろすと、衝立の中でパソコンに向かう。
特別なことをしている訳ではなく、オンラインゲームやネット上のコミュニティを利用しているだけだ。自宅にパソコンが無い、という訳でもない。
