「な……何がしたいの…?」
また敬語を指摘されて会話が成り立たないのは嫌だから、今度はタメ口で聞いた。
『いや、なんか反応面白くってさ』
そう言ってさっきの体制のまま顔を近付ける水原君に、体が熱くなる。
『弱味、握っちゃったし…』
弱味って…、キスのことだよね…?
『ちょっと遊んでみるのもいいかなぁって』
怪しく笑う水原君は、ちっとも王子様なんかじゃなくて。
『よろしくな、琥珀』
私の名前は、確かに橘琥珀(タチバナ コハク)だけど………
「なんで名前……」
私がそう言うと、一瞬水原君は、はっとした顔をしたけど、すぐに戻って、
『まぁいいからいいから』
とはぐらかした。



