「あなたには、実世界とブルーワールドが重ならないように、注意してほしいの…。そんなことを頼めるのは、この世界を知るあなたくらいよ」

和美は深呼吸をすると、僕に笑顔を向けた。

「赤星浩一くん」

「!」

あまりの美しい笑顔に、僕は息を飲んだ。

そんな僕の表情に気付き、和美は笑った。

「オホン!」

白々しい咳払いをする僕。

和美は微笑みながら、背を向け…僕をここに呼んだ理由を口にし始めた。

「…実世界には、あなたではなく…彼女達に行って貰うわ」

「彼女達?」

首を傾げようとした僕は、砂を踏む音に気付き、後ろを振り返った。

「な!」

後ろに立つ三人を見て、僕は言葉を失った。

「彼女達は、この世界以外では肉体を保てない。だから、あなたの力で!彼女達に、仮初めの肉体を与えてほしいの…」

和美は、あまりのショックでフリーズしている僕の耳許で囁くように言った。

「お願い」


そんなことを言われなくても、僕がこの三人に逆らえるはすがなかった。

「は、はい…」

僕は、コクリと頷いた。

「よかったわ」

和美は満面の笑みをつくると、再び耳許で囁いた。

「天空の女神を呼ばなくてよかったでしょ?」

「あははは…」

もう僕には、笑うしかなかった。

和美は、そんな僕からゆっくりと離れると、三人に顔を向けた。

「実世界…いえ、あたしの生まれた世界をお願い」

和美の願いに、三人はこくりと頷いた。

和美も頷くと、僕の方に顔を向け、

「もう1人…実世界に、向かった子がいるんだけど…彼女は、体が不安定なの」

「不安定?」

「そうよ。早く行ってあげないと」

和美はまた、空を見上げた。

「実世界が崩壊する前に」

そして、そのまま…和美は歌い出した。

鎮魂歌…レクイエムを。



天空のエトランゼ 第二弾。

天空のレクイエム 始動。