「冬馬から。」


「………ごめ…」


「謝るな。そんなの聞きたかない。」


「……えっと………」






凛が無表情で冬馬を見つめた。

初めてのコンサートツアーは、物凄い勢いで盛り上がっていた。

沢山のファンが迎えてくれ、テンションは何もしなくても上がっていく。

二月の頭から始まったツアーは、三月に入り、中盤を過ぎ、そろそろ終盤。

緊張が、油断に変わる。

小さなミスが連発した。

自分達にしかわからないような小さなミス。

笑って誤魔化してきた中盤。

さすがに後半、笑えなくなる。

ステージに出ていくだけで歓声があがる。

そんな状態に、酔ってしまっていた。

ただ一人、リーダー凛を除いて。











「……………………。」









何も言えなくなった中学三年の冬馬。







「龍。」









呼ばれて体を緊張させる高校一年の龍。









「……次からは……歌詞、間違えない。」










「間違えないねぇ。」


凛が無表情で言葉を繰り返す。


「憂樹。」









むすっとした高校一年、憂樹。









「寝る。」









「真樹。」










うつ向いたままの高校三年、真樹。










「……………ちゃんと……合わせる。」









「濂。」










俺。









「笑います。完璧に笑います。」