閉められた窓。
教科書くらい、いくらだって新しく出来る。
愛の心はどうなってる?
壊れてしまわないうちに、必ず俺が助けてやるから。
必ず。
使えるものは全部使う。
愛を守るためなら、なんだってする。
大切な幼馴染みだから。
大切な、愛、だから。
「お前、本当大胆だよな。」
「そう?」
「負ける。」
「勝った!」
「勝ちたかねぇわ。」
移動車の中。
凛が笑いながら呆れた。
今日の仕事。
母校訪問。
雑誌の取材で、リクエスト受け付けるって言われ、俺が提案した。
授業中を狙う。
急だったが、学校の許可もでた。
「何考えてんの?」
「何にも〜。」
あの日から二週間。
今日を待ってた。
次の日の朝。
早朝ロケのため、五時起き。
六時半に現場に集合。
電車の時間はまだ余裕。
昨夜、教科書を全部紙袋に入れた。
持ち上げたら底が抜けた。
押し入れを探し、愛がディズニーランドのお土産だと持ってきたビニールの袋に入れ換えた。
ちなみに、大きな袋に入っていたのは、小さな小さなミッキーの付いたボールペン。
今でも筆箱に入ってる。
愛には内緒。
「起きろ!」
いつもの通り窓から………荷物が重くて流石にギブアップ。
正攻法で、玄関からにした。
「あら濂ちゃん、おはよ。」
早起きのおばさんが、何の躊躇いもなく通してくれる。
「おじゃま。」
真っ直ぐに二階の愛の部屋へ。
閉まったドア。
少しだけ、気が重くなった。
深呼吸し、思いきりドアを開けた。

