しばらくすると、誰か私にログインをしてきた。
いさむ「こんばんは。始めまして」
 音のないログイン画面に文字が打ち込まれた。
香織 「こんばんは。遊びに来てくれてありがとう。」
 私はその言葉に、返事を打ち返した。
いさむ「何だか、元気の無い顔をしてるね。」
 すると続けて相手が文字を打ち込む。
 私はマイクをオンにした。
香織 「マイク使えますか?」
 私はマイクを使い自分の声で相手に語りかけた。
いさむ「ごめん持ってはいるんだけど、使い方が解らなくって。」
 画面には相手が打ち込んだ文字が入力された。
 私は〝いさむ〟にマイクの使い方を教えた。あの時自分が誰かに聞いたのと同じように。
香織 「話せる?」
いさむ「こんばんは、聞こえますか?」
 彼の声が私に届いた。
 軽い声だった。彼の声は透き通るような綺麗な声だった。
香織 「聞こえますよ。」
いさむ「どうしてそんなに悲しい顔をしているの?」
 顔を知らない声の主に私は一瞬心を開きそうになった。
香織 「悲しくなんかないよ・・・。」
いさむ「ごめんね、初めて話すのに。」
 彼の声は私の好きな声だった。
香織 「いいよ、私のことなんか気にしないで。」
 本当は大丈夫なんかじゃなかったのに。何時だって私は人を跳ね返そうとする。
香織 「チャットよくするの?」
 私はいつも通り、聞く必要も無い質問をした。
いさむ「いや、今日友達が東京から遊びに来てて、どうせおまえには話し相手もいないだろって、このチャットを教えてくれたんだ。」
 いさむの声は、ちょっと照れていた。
香織 「東京から?いさむ君は何処に住んでいるの?」
いさむ「沖縄だよ。」