「あ、有希。待って!」


史佳の声で、

冷静になることができた。


危ない。

史佳を一人にするところだった。

今の史佳は、

ボクを頼ってきている。

それなのに、

一人にしたらよくないよな。


「史佳、とりあえず今日は家に帰った方がいい。」


「帰りたくない。」


「なんで?」


「今はお父さんと一緒に住んでいるんだけど、お父さんの奥さんとうまくいってないの。」


そうだった。

史佳の家庭は、

お父さんもお母さんも、

愛人を作っていて、

結局お互い愛人と再婚したんだった。


「じゃあ、ボクの家に泊まるか?」


「うん。ありがとう。」


いつもの史佳なら、

『いいのー?』


って喜ぶはず。

さすがにまだ、

ショックがでかいよな。


「じゃあ、一緒に帰ろうか。」


「うん。」


こうしてボク達は、

久しぶりにボクの家に行った。

中学生の時に、

史佳が泊まった時以来だ。

すっげー嬉しい。

その反面、

大貴にはすっげームカツク。


大貴、

覚えてろ!

どんな理由があったとしても、

史佳を泣かせたことだけは許せねー。