外に出るとトントン、と靴の爪先で地面を叩く音がする。 勿論これは自分が立てた音。 開けた時と同じように、カシャン…と音を立てて玄関の鍵を掛けた。 見上げた空は店を出た時よりも明るく、セミの鳴き声も既にしていた。 (五月蝿い…暑い…) せめて帽子を持ってくれば良かった、なんて呟きは後の祭り。残念ながら諦めて、早々に駅へと歩を進めていく。 一路、【桃源郷】を目指して。