ロールプレーイング17

井上さんが僕を呼び止めた。今日はまだ僚介が配達から戻ってきていない、僕の方が早く帰って来るなんて、初めてのシチュエーションだった。僕は僚介の帰りを外で待とうと、表に出ようとしたけれど、井上さんの呼びかけにきびすを返し、井上さんの座るデスクに近づいた。他のメンバーも何人かいたが、外で雑務をしていて、事務所にいるのは僕と井上さんの二人だけだった。
「最近一も頑張ってるなぁ、一週間もすればもうだいぶ慣れてきたろう。」
 僕はそんな時なんて答えたら言いかなんてよく解らなかったから、、。とりあえずあいまいな返事をしてみせた。
「そこで、、なんだがなぁ。夏休みだけの短期の〝手伝い″でも、他の従業員と同様の扱いとして、細かい規定を話しておいたほうがいいと思ってな。新聞配達は慣れてしまえば単純作業のように感じるかもしれないがそうではない。けどな、顔は見えないかも知れんが、、。新聞を待っている人たちは、みんなお客さんなんだ。見えないことも多いが、客商売でもあるし、一人で事をなす中にも決まりや規則がある。簡単なようでも、出来る人がいて出来ない人がいる。だから仕事として成り立つ。一は仕事をする上で一番大切になるものは何だと思う?」
 僕は微かに首を横に振った。解らないと答える代わりに。
「まぁ、この答えは人によってさまざまかも知れんが、一番大きいのはな、責任とルールなんだよ。それが成立しなければ、会社も、社会も成り立たない。この一週間一には文字通り〝手伝い″をしてもっていた。一人一人の負担も減ってとても助かっている。〝手伝い″といったって、立派な仕事なんだ。」
 前置きが長過ぎだ。井上さんは、いったい何を言いたいんだ?はっきりその話の結論を僕にわかるように言ってくれ。僕は心の中でそう思った、僕は喉が渇いているんだ、、。早く表に出て缶ジュースでも飲み干したい気分なのに、、。
「新聞配達にも、暦としたルールや決まりがある。」
 まぁそりゃあそうだろう。そう思い僕は話のいきさつに耳を傾け続けた。