ロールプレーイング17

事務所に戻ってみると、僚介は先に戻っていた。

「お疲れ。」

 僚介は僕にそう言った。わざとらしくも無く自然な感じで、言い慣れた言葉を。
「お疲れ。」
 僕も僚介に同じ言葉を返した。テレビドラマなんかじゃ、仕事終わりのやつが〝お疲れ″なんて言ってるシーンよく見るけど。実際自分が仕事をこなして、お疲れなんて、口にするとなんだかちょっと照れを感じた。今の僕にとっては確実に言い慣れない言葉であったから。
「昨日より、件数は増やしたけど、結構いいペースだったんじゃないか?」
 僚介はまるで僕の兄、とも思えるような目で僕にそう言った。
「うん。そうかもしれないな。昨日より緊張はしなかったかも。」
僕は素直な気持ちで僚介に答えた。
「この調子で、夏休み一緒にがんばって行こうぜ!!」
 僚介は、握りこぶしを僕の方に掲げた。僕はそのこぶしに自分のこぶしを軽くタッチさせた。まるで契りを交わした兄弟のように。


 
 次の日も、そしてその次の日も、僕は問題なく仕事こなしていった。やっぱり新聞配達なんて僕にとっちゃ単純作業にしか過ぎないのと、、。数日前に感じた気持ちなどもうすっかり忘れて、、、。
 そうして一週間が過ぎ、8月になった。僕はだいぶ事務所の雰囲気にも慣れ、井上さんとも軽い世間話くらいは交わせるようになっていた。

「一、ちょっといいか?」