僚介はバイクにまたがると、メットの紐をきつく締めた。
「じゃっ。」
最初に別れを告げたのは僕の方だった。
「頑張れよ、誤配だけには気をつけろよ。無理しないでも今日は初日だしゆっくりでいいんだからな。」
僚介はそう言ってスロットルを握りしめた。
「解ってるよ。」
僕がそう言って自転車にまたがると、僚介は軽く僕の方に手を上げてからバイクを走らせた。僚介がいなくなったとたんに、僕は孤独を感じた。
強がっては見たけどやっぱり不安だった。
だけど僕は振り返らずに自転車のペダルを踏み込んだ。
すべるように自転車は走り出した。僕は順路長に従い、表札を確かめながら新聞のポスティングを開始した。最初はやっぱり緊張したけど思ったよりも順調で、むしろ接客なんかをするような仕事に比べたら、余裕じゃないかとさえも感じた。何も考えずにマイペースにこなせばいい、僕はそんな甘い考えを抱いた。
七月の夜明けは早く、気付けば朝もやの中に朝の光が立ちこめていた。日光の光に背中を押され僕はペースを速めていった。一部また一部とかごの中の新聞を減らして。僕の配達した新聞をいったい何人の人が読むのだろう、緊張感と言うよりむしろ僕はこの刺激が心地よいとさえ思った。
新聞を一部一部丁寧にポストに挟み込む、、、。僕の手から、たくさんの人の朝が始まってゆく、、。
これが僕にとっての〝初めての仕事〟
最後の一枚を配り終えて、僕は事務所を目指した。朝の日差しを体中に浴びて。


