桜の携帯が鳴ったのは夜の十一時を回った時。恐る恐る画面を見ると、美佐だった。 荷物をまとめていた手を止め、電話に出る。 「美佐?どうしたの?」 電話の向こうの美佐はかなり焦っていた。 「優がいなくなった!」 「どういう事?」 意味が分からず聞き返す。美佐は外にいるのか、車の音などが聞こえる。 「優全然家から出て来なくて、それで心配になった綾が大家から鍵借りて入ったんだけど、優がいなくて…。どこ探してもいなくて、携帯も繋がらなくて…。どこ行ったか知らない?」