どこか不敵な笑みを浮かべる水沢日向クン。


怪訝そうに眉を寄せてる楓を見つめながら水沢日向クンはゆっくりと口を開く。


「君が噂の王子なんだ」


そう言いながら、ポケットに手を入れて、近くにあった長机に寄りかかる。


「噂の王子? なんのことだよ?」


低い声で静かに言う楓には目もくれず、「んー?」なんて言いながら、首にある十字架のネックレスをもて遊ぶ。


挑発にしか、とらえられないこの行動に、楓が黙っているはずがない。


横目でチラリと楓を見る。


だけど、楓はクールフェイスを崩さずにずっと口を閉じて水沢日向クンを見ているだけだった。


「クラスの女子が教えてくれたんだよ」


ネックレスを指で弾くとゆっくりと顔を上げる。


「相沢楓っていう、学校一の王子様がいるってね?」


そう言って、口端を上げてニヤリと笑った。


水沢日向クンは楓の目の前までくると、透き通るような涼やかな声で静かに言い放った。