「あたしね、その言葉にはたくさんの意味が込められてるんだと思う」


空を見上げながら、愛チャンは呟くように言葉を発した。



「穂香だけが好きで、穂香だけが欲しい」


どうして……

ねぇ、愛チャン……。


ーーどうして、泣いているの……?


愛チャンの白い頬に、一筋の涙がつたった。


悲しそうな愛チャンを見ているのが苦しくて、今すぐにでも目を逸らしてしまいたい。


だけど金縛りにあったみたいに、愛チャンから目を逸らすことは出来なかった。


でも、一番苦しいのは。


ーー愛チャンの心情が分かってしまうこと。


きっと、愛チャンは。

楓が……好きなんだ。


愛チャンは、我に帰ったように頬の涙を力強く拭うと、あたしに笑顔を向けた。


「だから、穂香! 小悪魔の分まで頑張らなくちゃね!」


「愛チャン……」


影のある笑顔を見せる愛チャンを、あたしは複雑な気持ちで見つめていた。