「だけど、せめて少しの間でも楓クンの側にいたかった」


「だから、実らないことが分かってても思い切って楓クンに告白したんだって」

愛チャンはハチミツ色の髪を、邪魔そうにはらって続ける。

「だけど実際、好きな人がいるって言われるとすごく悲しくて、耐えられなかった」


そう言って、愛チャンは少し切なそうに笑う。

蓁宮椿姫サンは、そんなに悲しい思いをしていたんだ……。


「そう言われて傷ついても、全く諦めがつかなくて楓クンに言い寄ったんだって」


「それが、あの時ね」

あーちゃんは、腕を組ながら分かりきったような口調で言い放った。


あの時って確か、楓と蓁宮椿姫サンが校門で話してた時だよね?


「そしたら楓クン、なんて言ったと思う?」

「えっ?」


愛チャンは、真剣な眼差しであたしを見つめる。

「“俺は、穂香だけだ”」


その言葉を聞いた瞬間、顔が、かぁああああと赤く染まった。