遠く離れて行く蓁宮椿姫サンの背中をじっと見つめる。


背中が見えなくなった頃愛チャンが静かに口を開いた。


「あたしね、あの小悪魔には、なぁんかある気がしてさ」


えっ……?

眉をひそめて、愛チャンを見つめる。


「真実を確かめる、じゃないけどさ、なんか気になってここに来てみたの」


愛チャン、もしかしてあたしのために……?

そう思うと、胸の奥がジーンとなる。


「そしたら、あの子、涙ぐみながら全部話してくれた」

笑顔を浮かべながら、愛チャンは淡々と話し始めた。


「どうせ決められた相手と結婚するんだから、恋愛なんてしても意味ないって思ってたんだって」


「だけど楓クンに助けてもらって、一目惚れして、本気の恋をすることが出来た」


蓁宮椿姫サンの心情を話す愛チャンは、まるで蓁宮椿姫サンのように見えて目が離せなくなる。


「でも自分が恋をしても意味のないことも、楓クンを好きになっても、この恋が実ることはないことも全て分かってた」