「あ! あれ、穂香ちゃんじゃない?」
「せっかくの門出の日に欠伸してるぞ~?」
「楓チャン、カッコいいわねぇ~。穂香にはもったいないくらいだわ♪」
玄関を開けた途端、賑やかな音とともにそんな声が聞こえてきた。
あたしは急いでローファーを脱いで、声の聞こえるリビングへと向かう。
ーーガチャ
「あらぁ、 ふたりともおかえり~」
「おお。穂香も楓クンも、しばらく見ないうちに大人っぽくなったなぁ」
リビングに入ってきたあたしと楓を見て、お母さん達はニコリと微笑む。
お父さんもお母さんも、一年半前と全然変わってない。
むしろ、ハワイに行ってから更に若さが増したような気がする……。
「お父さんもお母さんも、会いたかったよぉ……」
久しぶりに会えた嬉しさが込み上げる。
あたしは思わずお母さんに飛びついた。
「お久しぶりです」
楓も挨拶をして、小さくお辞儀をする。
「鈴さんもお久しぶりです!」
あたしがそう言うと、鈴さんは笑顔で微笑んでくれた。
「穂香ちゃんったらすっかり可愛くなってぇ」
いやいやいや……
鈴さんの方が何千倍も綺麗だって……。
「今ね、鈴ちゃんが旅館で作ってきてくれたお寿司を食べながら、これ見てたのよ~♪」
テーブルの上に並べられた豪華なお寿司。
「うわぁ……美味しそう」
思わずよだれが垂れてくる。
「うふふ、卒業祝いよ♪ みんなで食べましょ」
そう言って鈴さんは、コップにオレンジジュースを注いでくれた。


